松戸市 外環道「三郷南-高谷」開通に見える光とカゲ
6月2日、首都圏でまた新たな高速道路が開通した。今回は、弧を描いて大都市の周りを走る環状高速道路への期待について、まとめてみたい。
■群馬県でも大きな期待 外環道の新規開通
5月末のとある日、群馬県の県紙である上毛新聞の一面記事を見てとても驚いた。
群馬県とはほとんど関係がなさそうな東京外郭環状道路(外環道)の三郷南インターチェンジ(埼玉県三郷市)~高谷ジャンクション(千葉県市川市)間がまもなく開通するという記事がかなり大きく掲載されていたからである。この開通によって、群馬県内の観光地への誘客や物流企業の業務の効率化に追い風となるため群馬県民も開通に期待を寄せているという内容であった。
高速道路には大別して、都市間を結ぶ幹線、準幹線の役割を果たすものと、大都市の周囲を大きく迂回して都市内に通過車両を入れないようにする環状道路、そして大都市内の乗降に主眼を置いた都市内を走る高速道路(都市高速道路)に分けられる。日本では、東名や名神のような都市間高速道路の整備は順調に進んできた一方、都市周辺の環状高速道路の整備は遅れていたといえるだろう。
今回開通した外環道は、文字どおり東京の外周に沿うように建設された環状道路であるが、構想から50年、今回の15.5kmの開通を足しても、まだ全体の85kmのうち6割が開通したに過ぎない。建設中の大泉JCT(関越道と接続)から東名高速との接続点まではまだ開通時期が定まっていないし、その先の区間はいまだに調査中で建設の予定すら立っていない。必要性がわかっていながら、住宅密集地であるため、用地の買収や莫大な建設費の調達のめどがなかなか立たず、今もなお全通に至っていない。
ちなみに、高速道路のIC、JCTは高速道路ごとに起点から順に1番、2番とナンバリングされているが、中央道も東名も2番が欠番になっている。どちらも外環道と接続するJCTのために空けてあるからだ。東名が全通した1969年に日本道路公団が発行した「東名高速ルート案内」という路線図には、東京ICのすぐ脇の道路上に2番という表示があるが、名前は空白になっている。当時から接続の計画があったものの、50年近く経ってもつながっていないことになる。
■時短効果は見込めるが、逆に新たな渋滞区間に
今回開通した区間を通ることにより、千葉県の湾岸エリアから常磐、東北、関越道方面へ向かう(もちろん、その逆も)際に、渋滞で時間が読みづらい都心の首都高速を通らずにダイレクトに行けるようになる。
開通前から期待が大きいうえ、東京の東部と西部では縦に移動する南北軸の交通網が弱く、その移動時間の短縮効果も見込め、開通が待ち望まれていた区間である。開通区間に並行して無料の一般国道も同時に開通したため、渋滞を避けて市川市や松戸市の生活道路に入り込んでいた車が少なくなるのではという期待も加わって、たった15kmほどの開通にしてはメディアの扱いも大きく、それがひいては群馬県の県紙の一面を飾るまでにいたったのである。
実は、2015年の首都高速道路中央環状線の西部区間(品川線)の全通時にも、また2014年の首都圏中央連絡自動車道(圏央道)の東名と中央道との接続部分がつながったときにも、同様に大きな期待が寄せられ、かなり大きく報道されたことを今もよく覚えている。
ところが、現在、この中央環状線の西部区間は、3号線と接続する大橋JCT付近や4号線と接続する西新宿JCT周辺で慢性的な渋滞が発生しているし、圏央道も中央道と接続する八王子JCT付近での渋滞が目立つ。
私はよく埼玉方面から5号線に乗り、中央環状線経由で東名方面へ向かう機会が多いが、環状線の渋滞の長さにうんざりし、結局5号線で竹橋まで出て、つまり東京都心を経由するルートを選択するケースのほうがはるかに多い。
もちろん、中央環状線や外環道の開通により首都高速の都心付近が以前よりは空いているので、開通の効果という意味では一定の役割を果たしているとは言えるが、当初の国や道路関係団体が盛んに宣伝したほどの劇的な効果には結びついていないように思う。合流点などがネックになって新規開通区間でも新たな渋滞が発生してしまうのは環状線に限ったことではないが、今回も便利であるがゆえに交通量が増大し、ジャンクション付近での渋滞が今後起きてこないとも限らない。
■環状高速の東西事情
環状高速は、首都圏以外でも建設されている。名古屋市の外周を通る名古屋第二環状道(名二環)は、2020年度には未開通の名古屋西JCT~飛島JCTの完成が予定され、伊勢湾岸道を介して完全な環状高速道路となるし、さらにその周縁部の東海環状道も岐阜~三重県の未開通区間が今年度から数年かけて開通するため、二重の環状高速道が完成する。
名古屋圏は環状高速道路の建設の着手は遅かったが、愛知万博という国際的なイベントを追い風に一気に計画が進み、今や都市周辺の高速道路の充実度は国内では最高クラスといえる。
渋滞も東名阪道の鈴鹿・亀山付近と名神の一宮IC・JCT付近が常連であるほかは、今はあまり目立たず、今年度中に新名神の四日市~亀山間が開通すれば、東名阪の渋滞もほぼ解消されよう。一宮JCTに建設中の西尾張IC(仮称)の完成も付近の渋滞の緩和に一定の貢献をしそうなので、名古屋圏の常時渋滞区間はほぼ解消するのではないかというくらい整備のペースが速い。50年かけても外環道完成のめどが立たない東京周辺とは大きな差となっている。
また、関西圏は大都市が京都から神戸へと帯状につながっていることや大阪市と神戸市の北側には産地が迫っていることから、効果的な環状高速道路が造りにくい。近畿道と中国道・名神高速でかろうじて大阪市の外縁を環状に結んでいるといえなくもないが、「環状」の名を冠した高速道路がないことからも、そうした機能が弱いことが見て取れる。
■今後の推移に注目
先日、国土交通省などから発表された外環道新区間開通後1週間の利用状況によれば、首都高中央環状線の通行量は1~2割減り、都心から放射上に延びる首都高でも渋滞が減っているし、利用者からも総じて所要時間の短縮が実感できていたり、並行する道路の交通量が減少したりしたという報告が多く上がっており、予想どおりの効果が見られているようだ。
他の環状線でも起きた新規開通区間の混雑が今後起きてくるのかどうかも見ながら、環状高速の真価を確認したい。